「再会」

彼女が突然姿を消した。土曜日、深夜の渋谷で。
手を尽くして捜したが行方はようとして知れず。どうして・・・

そして今日、ついに「再会」を果たした。
しかし、彼女は全ての記憶を失っていた

僕は彼女の身柄を引き受けることにした。
彼女の挨拶は戸惑うほどに他人行儀なものだった。あたりまえだが。
「初めまして。よろしくお願いします」
「・・・初めまして。でも本当は初めてじゃないんだ」
「え?ホントに?またぁ、誰にでもそんなこと言ってるんでしょ」
「・・・ゴメン。突然そんなこと言ってもわからないよね・・・」
「・・・でもね、なんとなくわたしもそんな気がする。なんでだかわからないけど。気のせいだね、きっと」

正確に言うと、彼女は「記憶を失った僕の彼女」ではない。あの日、渋谷で姿を消して以来、彼女の行方は今もわからない。そしておそらく、もうこの世にはいない。
今、目の前にいる彼女は、肉体はまったく同じの、別人。
わかりやすく言えばクローンだ。
姿かたちは同じで性格やしぐさもそっくりなのに記憶は別人。これほど哀しい「再会」があるだろうか。
ふと、彼女の首に目をやった。
かつて僕があげたアクセサリーはもちろんなかった。かわりに、ひどく地味な、ただのひもみたいなアクセサリーをつけていた。
また同じものを買ってあげるんだ。そう決めた。きっと似合うはずだから。

僕は、禁断の手を使うことにした。
半年前に、僕は彼女の記憶をある方法で記録しておいた。それを、この「彼女」に植え付けるのだ。
手術は無事に成功した。彼女は僕の名前ばかりか、僕の友人たちの名前やアドレス、電話番号までも「思い出して」くれた。
だが、それはあくまでも半年前までの記憶。それも完全ではない。あれほど大好きだった阪神タイガースの公式サイトや916掲示板のURLはどうしても思い出すことができなかった。
そしてなにより、この半年の間に彼女が見たもの、聞いたもの。それらはもう戻ってくることはない。
そう、彼女は彼女であって彼女ではないのだから・・・

だが、僕は伝えられる限りのことを伝えるつもりだ。
そして、どうしても埋めきれない思い出は、これから溢れんばかりの新しい思い出で埋めていく。
だから、これからも、またよろしく。


ということで、とりあえずケータイ復活しましたので。お騒がせ致しましたー。
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by masafuji1970 | 2005-08-09 23:52 | 日記


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